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難しいお年頃のオヤジへ

先日の流星ワゴンと同じ重松清の同じ系統の短編集。こっちの方が先に書かれていて、直木賞も受賞している。

同じ系統というのは、主人公の年齢や、テーマ。こちらは、ファンタジーな味付けはないので、「不思議な出来事」は起こらない。40歳前後に差し掛かった主人公が、妻や子供、そして自分の親との関係を見つめ直すきっかけとなるエピソードが、それぞれ描かれている。

40歳前後。難しいお年頃です。ここでは、いずれも子供を持つ父親が主人公だけど、立場や性別が違ってもある程度は理解できるだろう。

ささいな出来事から、「このままでいいのか」と悩み、苦しみ。けれど、結局は日常を生きていくしかない、「普通の人々」。それでも、この物語の主人公達は沈みっぱなしではない。どの主人公も、どこかで光明を見つけ、もう一度浮上している。何かが目に見えて解決するわけではないけど。なんだろう。それまで生きてきた自分、これから生きていく自分。そういったものに、ちょっとだけ自信が持てるようになっているからだろうか?

同年代の人に、特にお勧めです。

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久々のお気に入り作家登場か?

ロマンス小説の七日間
この本は、気楽に読めそうだと思って、何となく購入。しばらく寝かせていた。
先日発掘(!?)されて、読み始めて…。

えっ? なに? これって、現代物じゃなかったけ?
いきなりアリエノールっちゅうお姫様やら、ウォリックっちゅう中世の騎士やらが出てきたのだ。

種を明かせば、ヒロインがロマンス小説の翻訳者という設定。そして彼女の現実とリンクして、翻訳内容がとんでもなくぶっとんでくる。というお話だった。

ロマンス小説ってのは、あまり知識がないのだけど、いわゆるハーレクインだよね。美しい男女がいろんな困難を乗り越えて結ばれるという、予定調和な物語。バリエーションはあれど、パターンが決まっているので、愛好者も多く、安心して読めるという…。と書くと、馬鹿にしてるようだけど、実は読むとはまりそうな予感。決して嫌いな世界ではないのでだけど、敢えて読むほどでもなかっただけです。

二十八歳のヒロイン。半同棲中のマイペース(いきなり会社を辞めて来ちゃう)な恋人。居酒屋で顔を合わせる、いかにも今風な、言動に脈略のない女子大生(?)。など、登場人物はありがちっちゃあ、ありがち。なんだけど、ロマンス小説と絡めることで、妙におかしくなっている。そしてこのロマンス小説、翻訳者であるヒロインの捏造により、どんどんとんでもない話になっていくけど、これはこれで面白い。一冊で二種類の物語が楽しめるというお得な本なのである。

それと、うまく書けないけど、この小説の根底にある「真面目」な思考に好感が持てる。この作者の三浦しをんさん。初めて読んだのだけど、他の本も読んでみたいと思わせられる、そんな雰囲気があった。

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大人が信用できない世界

オレンジ党と黒い釜は、この日書いた光車よ、まわれ!と同じ天沢退二郎の作品。同様に復刊ドットコムで復刊された児童書でもある。オレンジ党シリーズ、また三つの魔法シリーズなどと呼ばれ、その第一作である。

作品の雰囲気、もしくは世界観とでもいうようなものは光車よ、まわれ!にとても似ている。主人公はルミという小学六年生の女の子。父親と二人暮らしで、突然父の故郷である街へ戻ってくる。まず、父とこの街の関係がいわくありげ。そして父親は自身の物思いに囚われており、ルミに対してはおざなりになっている。これ、今時の小説だと、家庭崩壊の物語になりそうだけれど、この当時(1978年発刊)の小学生は偉い。ルミはそんな父を気遣いこそすれ、恨み言一つ言わず、炊事や掃除などの家事をこなしている。
もっとも、ルミと同じ年のはずの自分自身が、当時それほどしっかりしていた記憶はないが……。

さて、転校した先の小学校で李エルザ(すごい名前だ)を中心とするグループの仲間となり、「とき老人」にそれまでの危険と魔法との関係を教えられる。というあたりは、「光車…」風。この両方の小説とも「怖い」のは、本来味方であるはずの肉親や先生が無関心、あるいは敵である点。しかも、「危険」というのがファンタジーにありがちな異世界の話ではなく、現実での危険である。「光車…」では、実際に死人も出ている。小学生の時に読んで、今でも強烈に覚えているのはそのあたりが原因なのかも。同じように感じた人が多いから、復刊ドットコムで投票が集まったのかもしれない。

ともかく、子供だましではない世界観。そして、小説としても前作より洗練された。

三部作の第一弾であり、オレンジ党とはそもそも何かをはじめこの作品では多くの謎を残したままだが、次を読むのが楽しみになる物語だ。

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愛すべき男性誌

この実録 男性誌探訪は、珍しく文庫化される前に買った本。いや、よく考えると大ファンってわけでもないのに、斎藤美奈子の単行本は意外とたくさん持っている。斎藤さんは人気作家なので、待ってれば文庫化される可能性は高いのだが、評論の場合は小説よりも一層旬のうちに読みたいものが多いからだ。

大ファンではないと書いたけど、結構好きではある。多分書評というジャンルなんだけれど、そこからエンターテインメントに発展させている。基本的に客観的。なおかつ断定的。実を言えば自分が詳しいジャンルだったりすると「えっ?」と思うことがないではないのだけど、間違いというほどではない。それに、これだけ断言されると、そうなのか、と納得してしまう。客観的と書いたが、結局本の選択から読み方まで、ほんとはとても個人的。けれど、そういった「自分は…」的な語りは極力排除して、一見客観的に見えるように評論するのが、彼女の芸風だ。で、見方が意地悪、皮肉&ユーモアたっぷり。舌鋒鋭く、売れてる本を斬っている。ただし、最近ちょっとやり過ぎというか、そういう芸風が定着してしまったための無理が目立つ気もしないでもないが。

いつも凄いと思うのは、毎回取り上げる本がばらばらなのに、それらについて非常に詳しく紹介してあること。専門的なものもあるのに、わかりやすい言葉で要約されている。さらに、その本が出版された背景などについても詳しく書かれている。さして長い文章ではないのに、一体どれだけの手間をかけて調べているのだろうと、感心するやら呆れるやら。

さて、この本はタイトル通り様々な男性誌をいろんな角度から斬りまくった、AERAの連載をまとめたもの。例によって、ちょっと意地悪な視点で、雑誌をからかっている。これがまた、いろいろなジャンルがあり。多分斎藤美奈子さん、ポストを愛読してるとか、釣りが趣味とか、実は鉄ちゃん、てなことは一切ないと思うのだが、まるでこれらの雑誌を昔から知ってるかのように論じている。そして、痛快。例えばLEONは「オヤジ、モテたい。以上終わり」。身も蓋もないけど、確かにそうだしねえ。

しかしこうやって並べて見ると、男性誌って基本的にナルシシズム満載なのかもしれません。自分自身、パソコン雑誌というほとんどが男性読者の雑誌の編集という仕事に就いているので、そういう意味でも興味深かった。

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